「 焙煎レシピ 」一覧

コーヒー焙煎手順の解説記事

コーヒー焙煎レシピの変遷


私のコーヒー焙煎レシピについて振り返ってみてみます。
大きく分けると以下の3パターンになります。

○サンプルロースター時代
○手網焙煎時代
○1ポンド焙煎機時代

ただ、焙煎機のレシピと手網焙煎のレシピは似通っている所が非常に多いと言えそうです。
なにせ手網焙煎のレシピを焙煎機にあてはめ、さらに手網にフィードバックしているのですから。

美味しいコーヒーの焙煎方法には、自分なりの原理原則がありまして、そこを外さなければ焙煎の道具はあまり関係ないだろうと考えています。

ただし、原理原則を維持できない焙煎方法ではダメですが。。。

こうして自分の過去を振り返ってみると、焙煎のやり方が大きく変化したというより、
・よくわかっておらずやみくもに焙煎していた時期
・焙煎方針が定まって、微調整を繰り返している時期

こんな感じになるかなと思います。

○サンプルロースター時代
自分が所有するサンプルロースターは、パンチ穴のないタイプで排気が全くダメでした。
とにかく蒸気や煙が籠ってしまうので、基本的にダブル焙煎でした。

※ダブル焙煎とは
焙煎初期に、生豆の色が褐色になり始めた段階で一度焙煎機から出して冷却し、再度焙煎機を温めて再投入する方法。
この方法は、品質の揃わない生豆を焙煎するときや、能力の低い焙煎機などで行われることが多く、焙煎の足並みをそろえる方法として、(意外と)有効です。

サンプルロースターでは、水蒸気が籠ってしまうので、豆を出すとともに、籠った水蒸気を外に出す目的で行っていました。

ただし、この方法の決定的な問題点は、コーヒーの風味がとても弱くなってしまうことです。
品質の低い豆なら、エグ味を抑える方法として有効かもしれませんが、スペシャルティーコーヒーでやってしまうと、平べったい風味の凡庸なコーヒーになってしまうこと請け合いです汗。

焙煎レシピは。。。
1.焙煎機を空の状態で温める
2.温度計を突っ込んで、内部が200℃(そもそもどこを測っていたのか今となっては謎ですが)になったら豆を投入。
3.弱火にして焙煎機を回し、豆が褐色になる段階でいったん豆をザルにあける
4.豆は冷却、同時に焙煎機は温めて中の水蒸気を飛ばす
5.再び200℃くらいで豆を再投入、火力は中火
6.1ハゼが始まったら弱火にする
7.2ハゼが始まったと思ったら豆をザルにあけて冷却

全行程で約30分ほどです。
時間はちゃんと計っていません。最初は計っていたのですが、何しろ毎回時間が変わってしまうので、途中であきらめて、豆の色とハゼの音で判断していました。

今振り返ると、全然ダメなレシピです(^_^;)
 
 
○手網焙煎時代
手網焙煎は難しいなんて言う方がプロの焙煎士にもいらっしゃいますが、そんなことはありません。
確かに業務用焙煎機に比べれば安定性に欠けますが、それでも下手なお店のコーヒーよりはるかに美味しいコーヒーを焙煎することができます。
手網の焙煎方法の基礎は、ワイルドコーヒーの手網焙煎講座で習いました。
押さえるべきポイントは、

・時間をきっちりと計ること
・手網を熱の通り道(熱のカーテンと表現していました)から外さないこと

つまり、ガスコンロの炎以外の冷たい空気のエリアにコーヒー豆が行ってしまうと、良くない風味の原因になるということなんだそうで。
あと、冷たい空気で豆が冷却されてしまうと、焙煎時間のコントロールもできなくなってしまいます。

では焙煎レシピ(生豆は125g、仕上がり約100gです)
1.生豆を水で洗い、チャフを取り除く(洗い方は省略(^_^;) 知りたい方は私まで問い合わせてください)
2.タオルでよく吹いて水分を切った生豆を手網に入れる
3.ガスコンロは強火(最強)で、手網を振る高さは常に一定にする(目標物を決めて振るとよい)
4.焙煎速度の調整は、焙煎を強めたいときは振る高さを下げ(炎に近づける)、弱めたいときは振る高さを上げる(炎から遠ざける)
5.(内緒の技)
6.高さは炎から20センチくらい(※コンロによっても変わります)で小刻みに力強く振る
7.豆の色が褐色になります(ここまでが6分30秒になるよう目指す)
8.少し炎に近づけて振る。パチパチと音がし始める(1ハゼ:ここまで9分)
9.炎から少し離して振る。今度はピチピチと甲高い音がし始める(2ハゼ:ここまで11分)
10.ザルにあけて扇風機(ドライヤーなど)で風を当てながら急冷させる

注:5.の所は我々が劇的にコーヒーを美味しくするための策を行うのですが、公開するか悩みましたが、やっぱり非公開にします。ワークショップなどのイベントでしたら公開してもよいのですけれどね(^_^;)

自分はめっきり1ポンド焙煎機に移行してしまいましたが、手網焙煎は今もなお有効な手法です。
 
 
○1ポンド焙煎機時代
このブログを書き始めてからは、コーヒーの焙煎は1ポンド焙煎機がメインですので、焙煎レシピはブログに繰り返し記しています。
ということでその集大成がこちら。

☆直火式、半熱風しき等の焙煎方式について
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(1)

☆自分の焙煎の考え方、焙煎の概要(ここはぜひ目を通してほしい)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(2)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明1(0.準備~2.初期加熱)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(3)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明2(3.第一反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(4)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明3(4.第二反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(5)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明4(5.発展領域)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(6)

改めて読み返してみましたが、よくもまあこんなにバラしてしまったものです(^_^;)
これ有料コンテンツでも良かったのではなかろうか?
そのうちに小冊子にしたら、誰か買ってくれるだろうか?
 
細かいところは、微妙に考え方が新しくなっている部分はありますが、基本的な概念は上にまとめた感じで今も変わっていません。
 
これが他の焙煎機でも通用するのか?というのが次なる課題ですが・・・
たぶん通用します。

10kg焙煎機までなら自分は使用経験があるのですが、少なくともそこまでは同じ考え方、レシピで通用するはず。

30kg釜以上の大型機になると、ちょっとわかりませんが・・・
 
正直、1ポンド焙煎機では全然注文に追い付けていないので、本格的な焙煎機欲しいのですが、、、
諸事情により(ていうか¥¥¥な事情で(^_^;)当分は現状維持な感じです。



コーヒーの焙煎 味作りのポイント(6)


年末に入り、忙しい日々が続いていますね。
ブログの更新もやや滞り気味ですが、頑張ってこのシリーズも完結させないといけませんね。

前回までの流れをおさらいしましょう。

0.準備
1.投入
2.初期加熱(~130℃)
3.第一反応帯(~170℃)
4.第二反応帯(170℃~200℃)

ここまで10分前後です。焙煎の深さによって、4.第二反応帯、のアプローチが異なることは、前回解説した通りです。今回はその続きのお話をしたいと思います。

5.発展領域(200℃~240℃)

ここでは、焙煎度の深さと風味をどうつけたいかによって、若干火力が異なりますが、基本は弱火で排気量を強くする、方針で焙煎しています。

A.B.浅煎り~中深煎りまでのコーヒーの場合
火力を落とし、排気もやや落とします。焙煎時間は1ハゼ後1分~2分程度で煎り止めします。
温度徐々に上げつつ、香りの成分を発展させるのが目的です。
この領域の時間のとり方で、キャラメルのようなフレーバーが乗ります。
火力をきっちりと落とさないと、ザラザラした苦味が乗って飲み心地が悪くなります。

温度上昇とともに酸味が失われていきますので、酸味を強くしたい場合は温度を上げないようにします。ただし、短時間で切り上げてしまうと風味が弱くなるので、極力温度上昇を抑えつつも時間はきちんとかけるようにします。

多くの焙煎士は後半は排気を落とさないと思いますが、私の焙煎機は熱容量が小さくて火力を落とすとすぐに焙煎の進行が止まってしまいます。そのために、排気を落として焙煎機が冷えすぎないように気を遣っています。あと、排気を落とすことで苦みの発展を抑える意図があります。

この領域では煙とチャフ(コーヒー豆についている薄皮)がたくさん出ますので、排気を落とさなくてよいなら落とさない方が良いとは思います。ただ、自分の見解として、ニュートラルポジション以上に排気をしているならば、豆に煙の戻り香はつくことは無いんじゃないか?と考えています。

排気を維持する目的は、どちらかというとチャフを飛ばすことがメインと考えています。自分の焙煎機はチャフを飛ばしきるパワーが無い(^^;)ので、そこを諦めて風味コントロールの意味で排気量をいじることの方が多いです。

C.中深煎りよりも深い焙煎の場合
フレーバーの発展はもちろんですが、同時に苦味を調整します。
ここでの火力調整で苦味を乗せるか、乗せないか決めます。

・苦いコーヒーにしたい場合は、ある程度の火力を維持します。
・苦くないコーヒーにしたい場合は、焙煎が進むぎりぎりの状態まで火力を落とします。

目安として、1ハゼ後から2ハゼまでの間隔が3分を切らない程度の火力であれば、苦味が乗らないコーヒーになるようです。

グッとくる苦味を乗せたい場合は、火力をあまり落とさずに。
軽い苦味にしたい場合は、苦くない場合よりやや火力を上げ気味に。

ここでの微妙な火力調整で、苦味をコントロールします。

苦味の乗りやすさはコーヒー豆の産地によっても異なるので、豆ごとに火力は異なります。

自分の経験では、
・タンザニアの豆は、良い苦味が乗せやすいです。
・スマトラの豆は、苦味が乗りにくいので、苦くしたい場合はかなり火力を上げます。
・ジャワの豆(アラビカ)は、簡単に苦味が乗ります(アイスコーヒーの苦味用に使ってます)。

排気については、チャフが飛ぶのに十分な排気ができていれば問題ない、と考えています。

2ハゼについて

コーヒーは「ハゼ」と呼ばれる現象が2回あります。
最初は「1ハゼ」と呼ばれ、豆の内圧が高まって蒸気が細胞壁を破って起こる現象です。
次が「2ハゼ」と呼ばれ、組織が硬化して、発熱とともに崩壊して起こる現象です。

1ハゼが「ポンッ、ポンッ」と比較的勢いのある音なのに対して、2ハゼは「ピチッ、ピチッ」と甲高い音がします。

2ハゼを過ぎると、豆は自発的に発熱して焙煎は一気に進みます。2ハゼが終わると、豆はそのまま炭化へと向かいますので、炭になってしまわないうちに窯から豆を出さないといけません。この辺になると、豆に引火して燃えてしまう危険も出てくるので、極深煎りにする場合は余計に気を遣います。

ちなみに私はフレンチローストまでで焙煎を終えます。イタリアンローストは苦味しか感じなくて、自分が好きじゃないのと、そもそも需要がないのが理由ですね。
苦いコーヒーはフレンチロースト手前でも十分に苦いので、極端な深煎りにする理由がありません。

以上で、私の焙煎方法を一通り解説しました。
焙煎を1つのパターンで行う事は不可能で、食材に合わせて調理方法が異なるように、豆に合わせて焙煎方法も変えていかなければなりません。
また、同じ豆でも焙煎方法を変えれば異なった味にすることが出来ます。

そういった意味で焙煎方法に絶対はないので、焙煎する人の意図通りの味になったのかどうか、それを飲む人が美味しいと思えるのかどうかが大事だと考えています。

何がともあれ、焙煎を議論する大前提として品質の良い生豆がある、このことが一番大事です。
良い生産者が良い豆を作り、その品質を維持しながら輸送する技術がある。焙煎もまた、良いコーヒーをお客様にお届けする過程の一つでしかありません。

そのことは常々肝に銘じて、これからも精進していきたいと思っております。



コーヒーの焙煎 味作りのポイント(5)


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前回の記事:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明2(3.第一反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(4)
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少し間があいてしまいましたので、前回までの流れをおさらいしましょう。

0.準備
1.投入
2.初期加熱(~130℃)
3.第一反応帯(~170℃)

ここまでで大体7分~8分程度です。

自分の焙煎は全行程が、深煎りでも15分、中煎りだと10分程度の時間で完了します。
いわゆる短時間焙煎といわれる方法ですね。ですので、第一反応帯までで半分以上の工程が終了していることになります。

では、後半の焙煎行程について解説します。

4.第二反応帯(170℃~200℃)

この領域では、コーヒー豆は褐色からより深いこげ茶へと変色し、より収縮していきます。この時コーヒー豆の組織内部では、水分を始め、さまざまな成分が閉じ込められ、内圧がどんどん上がっている状態になっています。そしてある温度になると、内部の圧に豆の組織が耐えられなくなり、ポンッと音がして弾けます。これをハゼといい、この領域で起こるハゼを1ハゼと呼んでいます。

私の焙煎では、時間のかけ方、火力と排気量のバランスに注意を払います。

この工程の焙煎方法にはいくつかのパターンがあります。

A.酸味のコーヒーで、第一反応帯を強火で通過した場合

この領域では、火力を落とします。排気量はやや落とします。
第一反応帯までに、かなりの熱量をコーヒー豆に与えているので、その余熱で焙煎を進行させます。
ある程度の時間をかけて、青臭い風味を消すように心がけます。
ハゼが始まると、相当な量の煙及び蒸気が出るので、排気はそんなに落とさないです。

B.酸味のコーヒーで、第一反応帯を弱火で通過した場合

火力を大幅に上げます。同時に排気量も増やします。
第二反応帯で形成される苦味が少なくなるように、短時間で通過させるのが狙いです。
ここで形成される苦味は、コーヒーらしさを表現するのには重要なのですが、私の酸味コーヒーは、コーヒーらしくないことが重要ですので(笑)、あえて苦味形成を避けるようにします。

C.中深煎りより深い焙煎の場合

火力と排気量を上げます。しかし、B.のような強火力にせず、ある程度の時間をかけて第二反応帯を通過するように心がけます。コーヒーらしい苦味が形成されますので、反応が十分に進行するようにします。かける時間は3分くらいで、これより早いと軽いコーヒーになります。時間をかけてもよいですが、焙煎の進行が止まってしまわないように、ある程度の火力は必要だと考えています。

火力を上げて短時間で第二反応帯を通過させると、軽くて透明感のあるコーヒーになり、時間をかけると質感が増してコーヒーらしくなります。
また、火力で焙煎を進行させるのと、排気量を上げて焙煎するのとでは風味の異なったコーヒーになります。最終的にどんなコーヒーに仕上げたいかで火力と排気のバランスを変えていきます。

この領域では、クロロゲン酸と呼ばれるコーヒーの風味を決定づける酸が、良く形成されるようです。
この風味をどのように生かすか、または抑えるかによって、出来上がるコーヒーの風味は変わってきます。

1ハゼについて

先に述べたように、豆の収縮が進んで内圧が上昇し、組織が耐えられなくなると、組織の一部が破れて内部のガスが解放されます。この時に「ポンッ」とポップコーンが弾けるような音がするので、この状態を1ハゼと呼びます。

1ハゼの起こる温度は、それまでの焙煎プロセス、豆の産地によっても変わってきます。
焙煎の初期段階を弱火でじっくり時間をかけた場合、1ハゼの温度は高くなる傾向にあり、ハゼ音も小さくなります。これは焙煎初期に時間をかけたことで、豆の表面から水分が抜けていったことが要因であると思われます。

また、ケニヤ、タンザニアの豆よりもブラジルの豆の方が1ハゼの温度が高い傾向があります。ケニヤ、タンザニアの豆は高地で栽培されており、火の通りにくい固い豆であるといわれています。一方ブラジルは、低地での栽培がおこなわれており、火が通りやすくて柔らかいという評価がなされています。

固い豆の方が組織に弾力がなくハゼの温度は低い、柔らかい豆の方が組織に弾力があってハゼの温度は高い。そんな推測をすることができますね。

以上の状況から、私は「1ハゼは豆の水分と組織の状態で起こり、風味成分形成との相関は低い」と考えています。つまり1ハゼを焙煎の火力コントロールの目安にするより豆温度または排気温度で、火力変更のタイミングを図った方が良いのでは?と考えています。

ただし、ハゼを火力調整の目安にすることが誤りではありません。ハゼによって組織に穴が開き、熱が一気に内部に入り込むことで焙煎は急激に進行します。したがって、1ハゼが起きたら焙煎の進行を落とすために火力を落とす事は理にかなっています。

結局はどのような思惑で火力を変えていくのか、その辺が重要になってくるのかなと。
コーヒーの焙煎には、正解も不正解もありません。

いかなる焙煎方法であったとしても、それで美味しいコーヒーができたのであれば正解と言えるのです。

また長々と書いてしまいましたね・・・
次は発展領域~煎り止めまでを描いていこうと思います。

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続き:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明4(5.発展領域)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(6)
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