「 焙煎レシピ 」一覧

コーヒーの焙煎 味作りのポイント(4)


引き続いて、私の焙煎プロセスを解説していきたいと思います。

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前回の記事:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明1(0.準備~2.初期加熱)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(3)
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そうそう、注意点を一つ追加します。焙煎を実践されている方はご存知と思いますが、表記されている温度は私の焙煎機での温度になります。焙煎機の温度センサーの位置によって豆の焙煎進行具合と温度の関係はかなり違ってきます。

例として、私が以前に操作した焙煎機の1ハゼの温度を挙げてくらべてみますと(豆はコロンビア/スプレモ)

・ 2kg釜、半熱風式 ・・・ 165℃
・ 5kg釜、直火式  ・・・ 180℃
・10kg釜、直火式  ・・・ 200℃

焙煎機メーカもそれぞれ異なりますが、これだけ異なった温度になります。ちなみに自分の小型釜では、1ハゼの温度はコロンビア/スプレモならば大体200℃になります。

ちょっと横道にそれましたが、続きを解説していきます。

3.第一反応帯(130~170℃)
ここは生豆の様子が最も変化する領域です。
生豆の色が、緑色→黄緑色→黄色(白)→褐色、このように変化し、終盤では豆の表面にしわが増えて収縮していきます。豆の内部では元々あったタンパク質、糖類などが分解されて別の物質に変わります。その反応過程で、リンゴ酸、クエン酸、ギ酸、の様な酸が形成されます。

色が褐色になった後、170℃前後から豆は徐々に収縮してシワシワになってきます。おそらくこの様子からこの領域を「水分抜き」と呼ぶのだと思いますが、私の見解では、この領域では「水分抜き」と名付けるほど水分は抜けていないと考えています。豆の色の変化は内部の成分の変化によるものですし、豆の収縮は繊維質が弾力のあるゴム状態から再び状態変化して硬化しているためです。

実際に水分が最も抜けるのは、この後の工程、第二反応帯~発展領域で起こる「1ハゼ」と呼ばれる現象の時です。

話を戻しましょう。
第一反応帯をコントロールする際のポイントは、

・むやみに時間をかけない

これに尽きます。時間をかけすぎると、アミノ酸などの二次生成物がさらに反応して旨みが失われ、味気ないコーヒーになっていくように感じます。スペシャルティーコーヒーではあまり感じませんが、コモディティーコーヒーでは顕著な傾向があります。ただし、コモディティーコーヒーでこの領域の焙煎時間をを短くし過ぎると、本来消さなければならない雑味成分が残ってしまい、渋くてエグ味のあるコーヒーになります。

逆に雑味成分の無いスペシャルティーコーヒーなら、この領域の時間を短くしてなるべく旨み成分の消失を押さえることが出来ます。

私の焙煎方法では、酸味のコーヒーと、中深煎りより深い焙煎のコーヒーとでは、この領域でのレシピが異なります。

A.酸味のコーヒーを焙煎する場合

この領域に入る直前に火力を上げます。理由は2つあり、
・酸味成分をバランス良く形成させたい
・うまみ成分であるアミノ酸の消失を抑えたい

です。
果実の様なフレッシュな風味は、主にリンゴ酸、クエン酸によるものですが、これらの酸は早い段階で形成されて、焙煎の進行と共に消失していきます。時間をかけるとギ酸、コーヒー酸の様な揮発しにくい酸も形成されて、味に影響を及ぼします。フレッシュな風味を残すために、短時間でこの工程を通過して余計な酸の形成を抑えたい、そう考えての短時間プロセスです。

ただし、本工程を短時間で終えると、そのままでは青臭い風味が残ってしまいますので、次の工程で青臭さを飛ばす工夫をします。

B.中深煎り、深煎りのコーヒーを焙煎する場合

火力を落とし、ゆっくりと焙煎を行います。酸味のコーヒーでは邪魔と考えているギ酸やコーヒー酸など揮発しにくい酸は、後の工程でさらに変化してコーヒーの風味の素となりますので、こちらのプロセスではしっかりと形成させるように心がけます。しかし時間をかけすぎると旨みは失われて味気なくなってしまうので、本工程の時間は2分30秒~3分に収まるように火力を調整します。本工程の通過時間が早すぎると、青臭い風味が残ります。

以上の説明は、大部分が自分の経験と推測に基づいたものですので、科学的根拠は示せません(笑)ので、その点ご了承ください。

「コーヒーなのに納豆臭?」の記事でも触れましたが、納豆臭を抑えるためにはこの領域の焙煎時間をしっかりと取ることが重要です。しかしそれは同時にコーヒーの旨みを弱めることでもあります(と自分は考えています)。ですので、旨みを取るか、香りを取るかによって焙煎のレシピは変わってくると思います。

コーヒーの納豆臭は、コーヒーの生産処理過程と深いかかわりがあると私は考えています。コーヒー豆の精製過程は多かれ少なかれ、果実を発酵させるプロセスがあります。豆自体は発酵しませんが、発酵時の成分は多分に残っていると思われます。よって水洗処理法の豆よりもナチュラル製法の豆の方が、納豆臭のコーヒーになりやすいかなと想像しています。

モカコーヒー、ブラジルコーヒーはナチュラル製法の豆が多いですので、納豆臭も発現しやすい・・・かも。
この辺は、また時間があったら検証してみたいと思います。

豆の生産処理については、別途記事を書くことにしましょうか^^;

また長くなってしまいました。
次回は、第二反応帯以降の、焙煎の後半プロセスについて書いていこうと思います。

乞うご期待^^;

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続き:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明3(4.第二反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(5)
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コーヒーの焙煎 味作りのポイント(3)


前回は焙煎全体の流れを説明したので、今回から各ポイントの詳細を説明したいと思います。
なお、この方法はあくまでも自分の焙煎機に準じた方法ですので、その点十分にご留意願います。

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前回の記事:
☆ 自分の焙煎の考え方、焙煎の概要
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(2)
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自分の焙煎機の特徴:

・半熱風器、超小型で最大焙煎容量は550gです。しかし通常の焙煎では280g以上やりません。
・投入280gで出来上がり230g位、販売用200g、味確認用に30g取ります。
・小型ゆえに熱容量が小さく、その分を火力で補っている部分はあります。したがって、大型の焙煎機ならもっと火力を抑えても、同じようなプロファイルになるとは思います。

あともう一つ注意点が。この焙煎プロファイルは「スペシャルティーコーヒー用」です。
コモディティーコーヒーにこの焙煎方法を適用してしまうと、渋みやエグ味が強調されて、たぶん飲めないと思います。

品質の良い豆を使用する焙煎方法だから、未完熟豆の渋みや、欠点豆のエグ味がなく、豆自身の風味を色濃く残して美味しいのです。その点も十分にご留意ください。

それでは、各工程を掘り下げてみようと思います。

※追記(2016.12.23)—–
検索エンジンのトリックで、このページが人気になっていますが、正直言ってここだけ読んでも何を言っているのかわからないと思います。是非先にこちらに目を通していただければと思います。

☆直火式、半熱風式等の焙煎方式について
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(1)

☆自分の焙煎の考え方、焙煎の概要(ここはぜひ目を通してほしい)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(2)

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0.準備
欠点豆の除去はわかりますよね。スペシャルティーコーヒーといえども欠点豆が数%程度混入しています。美味しいコーヒーから欠点を除去して、よりおいしいコーヒーに仕上げようというのが狙いです。

保温庫に入れる目的は、そもそも夏と冬とで焙煎条件が大きく変わってしまうのは、生豆が外気で温められたり冷やされたりするからでは?と疑問に思ったのがきっかけでした。生豆を専用の定温庫で保管できるのであれば理想的ですが、残念ながら私の生豆倉庫は外気の影響を受けてしまうので、豆を投入する直前に温度を一定にすることで通年で焙煎条件を揃えるようにしています。

1.投入
コーヒー生豆を常温から焙煎するということは、まずないでしょう。非常に時間がかかるうえに、美味しく焙煎できないからというのがその理由です。焙煎機をあらかじめ温めておき、予熱で一気に目的の温度まで生豆を温めるのが一般的です。

熱容量に余裕のある焙煎機ならば、ある温度まで温めておいてから火を止め、そのあとに豆を投入します。私の焙煎機は熱容量に余裕がないので、火を止めずにある温度を維持しておいて、そこに豆を投入します。豆を投入した直後に一気に火力を上げます。

生豆を投入すると焙煎機の温度は急激に低下します。焙煎機の温度と生豆の温度が平衡になり温度変化が昇温に転じる温度を、中点またはターニングポイントといいます。

中点温度を高め(110℃以上)にとると、マイルドな口当たりのコーヒーになり、低め(100℃以下)にとると、スパイシーな風味が強く出てきます。特徴のある風味を狙うなら100℃あたりを狙うのもよいかと思います。ただ、直火式焙煎機だと中点変化による風味の変化は感じにくいように思います。逆に中点を下げすぎると、不快な渋みが強調されてしまうこともあるので、直火式焙煎機ではあまり極端なことはやらない方が良いかもしれません。

火力を上げることで中点温度が変わることはほとんどありません。したがって中点温度は焙煎機の予熱温度に左右されます。それにもかかわらず火力を上げる理由はなんなのか?理由は次の初期加熱の項でまとめて説明することにします。

2.初期加熱
ここで初期加熱と言っている領域は、豆を投入した直後から中点を通過して第一反応帯に到達するまでを指します。したがって、投入の項と話が前後している部分もありますのでご了承ください。

投入時に豆を加熱する理由ですが、先に述べたように私の使用する焙煎機は蓄熱量(熱容量)が小さく、投入時の熱量不足を補うためというのが一つ。中点を通過したら速やかに第一反応帯の温度領域に豆温度を移行させたいというのがもう一つの理由です。

中点付近の温度領域(100℃付近)では、生豆を構成する繊維がガラス質からゴム質へと状態変化します。この状態変化に多くの熱を奪われるので、十分な熱量を与えておかないと思ったように温度上昇しないという事態が起こります。中点通過後に加熱するという方法もありますが、私の焙煎機の場合それでは間に合わないので、豆投入直後から高火力で熱エネルギーを与え続けるということを行っています。

ずいぶん長くなったので、今回はここまで。次回は第一反応帯の詳細についてからお伝えします。
 
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続き:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明2(3.第一反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(4)
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コーヒーの焙煎 味作りのポイント(2)


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前回の記事:
☆直火式、半熱風式等の焙煎方式について
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(1)
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焙煎を理解するのに、私が大事だと思っていること、それは「焙煎は化学変化である」ということを念頭に置くことかなと思っています。
その上で、料理としてコーヒーの味を作ることを考えると、割と思い通りに焙煎ができるようになると思います。

「焙煎は化学変化である」を意識する意味について、少し説明します。コーヒー生豆には数百種類の成分が確認されており、熱を加えることによってそれらが複雑に反応していきます。それらの化学成分が分解したり再結合したりするためには、物質ごと固有の反応温度、反応時間が決まっています。(ここにコーヒー豆を構成する繊維質の状態変化も影響してきますので、かなり複雑な反応が起こっていると考えられます。)

もちろん数百種類もの成分が反応するので、各成分ごとに反応温度は違っていますが、大きく見れば3つ(投入工程を含めれば4つ)の温度帯域にまとめられるように思います。それを踏まえた上で焙煎に必要なことは、

・ある温度帯に速やかに入れるための、迅速な昇温
・その温度帯を維持するための、火力コントロール
・(自分で想定した)規定時間を過ぎたら、速やかに次の温度帯に移行、もしくは焙煎を止める

あくまでの私の焙煎の場合ですが、焙煎の温度上昇を一定にするという考えは持っておりません。
したがって「1分間に○○℃昇温させる」という概念では、私は焙煎を議論できないのです。

冒頭から難しくなりました・・・
理屈はさておき、具体的なコーヒー焙煎手順から説明して行きたいと思います。

と言ってもいきなり焙煎の詳細を書いても訳判らないとおもいますので、まずはざっくりとした流れ、火加減などを書いてみたいと思います。

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0.準備
生豆の選別を行い、欠点豆を取り除く。焙煎する分を計量して小分けし、保温庫に入れて30℃で1時間以上温めておく。

1.投入
焙煎機に火を入れて、空の状態で規定の温度まで温めておく。既定の温度になったらタイミングを見計らって生豆を焙煎機に投入する。

2.初期加熱
豆を投入したらすぐに火力を上げる。130℃までは短時間で一気に昇温することを心がける。
この工程の途中で焙煎機の温度は大きく下がり、(中点で)折り返して上昇に転じる。

3.第一反応帯(130~170℃)
火力を変化させ(落とす場合も上げる場合もある)、適正時間で反応が進行する様に火力を調整する。豆の色は緑→黄緑、又は白に変色。
適正時間は2分30秒が目安で、豆ごと、味ごとで長くしたり短くしたり調整する。
この温度帯の後半170℃付近で、豆の色は茶色くなってくる。
※この領域の火力調整で酸味の強さと質をコントロールする。

4.第二反応帯(170~202℃)
火力、排気の風量を適正値に合わせる(通常は火力、排気量ともに上げる)。強すぎても、弱すぎても理想の味からずれてしまう。
キャラメル化を促進させ、コーヒーらしい味わいが出てくるようにする。
適正時間2分30秒~3分
豆の色は全体的に茶褐色で、この工程の終盤に豆がハゼる。

5・発展領域(202℃~)
火力を落とし、香りと風味の発展を促す
中煎りの酸味を強調させたいコーヒーでは、焙煎が止まらないぎりぎりまで火力を落とす。
深煎りのコーヒーでは火力はやや落とす程度で、焙煎を速やかに進行させる。
※この領域の火力調整で、苦味をコントロールする。

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おおざっぱに書くとこんな感じですが、コーヒーの焙煎で一般に言われている「水分抜き」については触れていません。一般に言われている水分抜き領域は第一反応帯に相当しますが、自分はここでの工程を水分抜きと捉えていないのです。水分が抜けるかどうかは重要ではなく、この領域はあくまでもコーヒーの風味を形成させる成分の下地作りという位置づけです。

また、コーヒーは一定時間焙煎が進行するとパチパチとハゼます。多くの焙煎士はハゼのタイミングを火力調整のタイミングにしていますが、私はハゼを焙煎進行具合を見る目安としてのみ確認しています。ハゼようがハゼまいが、規定の時間内に規定の温度になっていなければ火力は変えません。

ちょっとわかりにくいかもしれません。
自分の焙煎では、酸味のコーヒーと、深煎りのコーヒーでは焙煎工程が大きく違うので、一つにまとめるとどうしても抽象的になってしまいますね(^_^;)

最低限、焙煎中の第一反応帯、発展領域で酸味や苦味を調整しているということをご理解いただければ、今後私が書く文章が理解しやすくなるかもしれません。

次回以降は、各焙煎工程を一つずつ取り上げて、じっくりと(マニアックに笑)語っていきたいと思います。
 
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続き:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明1(0.準備~2.初期加熱)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(3)
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