「 2015年07月 」一覧

美味しいコーヒーの産地 ~エチオピア~


エチオピア地図

エチオピア国旗

街中の人に
「コーヒーの産地を言ってください」
と質問したら、確実にブラジルが一位になるでしょうね。その次がコロンビアでしょうか。

コーヒーの産地はどこ?
と問われてエチオピアを真っ先に挙げる人は、相当なコーヒー好きと思われます(笑)。
しかし、エチオピアのコーヒーは、産地別の美味しいコーヒーとして真っ先に取り上げるだけの価値があります。

エチオピアコーヒーは、古くから「モカ」コーヒーとして知られています。
エチオピアコーヒーを聞いたことが無い人でも、モカコーヒーは知っているでしょう。

風味は非常に独特かつエレガントで、華やかな香りを持ち、キリッとして後味の良い風味は多くの人を魅了しています。
また深煎りにすると、チョコレートフレーバーを感じることができます。
「カフェモカ」と言うココアとコーヒーを混ぜた飲み物は、モカコーヒーのようなチョコレートフレーバーをイメージして作られたらしいですよ。

自然にコーヒーが育つ環境があるエチオピアは、最も美味しいコーヒーができる国の一つなんです。

国土の大部分はアビシニア高原と言われる地域で、標高2000m~3000mあります。
気候区分としてはサバンナ気候ですが、
アビシニア高原は、標高があるおかげで気温変化は15~25℃前後と温暖で雨量も多く、
植物が生育しやすい環境がととのっています。

このアビシニア高原こそ、コーヒー発祥の地と言われています。
14世紀ごろまでに、エチオピアや、海峡を挟んで隣の国イエメンでコーヒーがイスラム聖職者によって発見され、眠くならない薬として重用されました。
17世紀までは、世界のコーヒーはエチオピアとイエメンが(と言うよりイスラム社会が)独占的に生産していました。
エチオピアのコーヒーは、かつてイエメンの「モカ港」に集積され、世界に出荷されていました。
それ故に、エチオピアのコーヒーを現在でも「モカ」と呼ぶのです。

この地域には、現在も数多くの野生のコーヒーの木が存在しています。
種類はすべてアラビカ種ですが、種が特定されていないコーヒーが数多く存在しているようです。
エチオピアのコーヒーは、野生だか農園だか良く判らないような状況で育ったコーヒーが収穫されているのです。

地区としては、
・ハラー(東部)
・シダモ(南部)
・ジンマ(西部)
・レケンプティ(西部)

が有名です。
近年、シダモ地区のイルガチェフェ村産コーヒーが特に人気ですね。
私も常に在庫を持っています。

エチオピアのコーヒー生産量は世界第5位ですが、世界シェアとしては4%程度です。
コーヒーはブラジルが40%、ベトナムが20%のシェアを誇っており、残りの4割を多くの国で分け合っている感じです。

エチオピアのコーヒーは、欠点豆の少なさでグレードを定めています。
エチオピアには高地であるため、コーヒーを食い荒らす害虫が少なく、病気にもあまりならないため、コーヒーの品質は単純に生産処理の良し悪しで定められる事ができるからです。

病害虫がいない環境であるため、農薬を使う必要は無く、また貧しいが故に農薬を買う事も出来ないため、特に記載がなくても無農薬栽培のコーヒーがほとんどです。
(資産に余裕がある生産団体が管理している地域では、オーガニック認証などを取っているところもあります)

コーヒーの美味しさは、量ではなく質、それは間違いなさそうです。



美味しいコーヒー 世界を俯瞰した場合の大雑把な特徴


コーヒーの特徴を一言でいえば?

これほど難しい事はありません、実は・・・

このブログでも何回か申し上げていますが、コーヒーの風味は焙煎によっても変わってくるので、
焙煎と風味特性を切り離して語るのは、かなり無謀とも言えます。
きちんと議論するなら、焙煎度の同じコーヒーで比べないといけません。

とはいっても、大雑把な特徴については言えることもあります。

一般には、
・アフリカ大陸のコーヒーは男性的
・アメリカ大陸のコーヒーは女性的

そんなことが言われています。

アフリカ大陸のコーヒーは、産地ごとの特徴がかなりはっきりと現れます。
それに比べて、アメリカ大陸のコーヒーは、全体的にマイルドな傾向があります。

はっきりとした理由は判りませんが、思いつく理由の一つに国ごとの生産量があります。

コーヒーの収量、ダントツ一位はブラジルです。
ブラジルの一つの農園のコーヒー出荷量が、アフリカの国一つの出荷量よりも多い事は良くあります。
広大な土地を有していることもありますが、面積当たりの収量が多いんですよね。
これは、栄養を十分に与えて、一本の木からたくさんのコーヒーを収穫していることが理由です。

一方アフリカは、貧しい地域が多く、コーヒーに十分な肥料を与えられないことがあります。
なので、一本の木から採れるコーヒーの量も少ない傾向が出てきます。
ただ、これは推測なのですが、実の量が少ない分、味は凝縮しているのでは?

あとは、地域ごとの土壌の特徴が挙げられます。
コーヒーの風味は、土地に含まれるミネラルによってずいぶんと味が変わってくるようです。
アフリカの方が、国ごと、地域ごとの特徴が出やすい土壌なのかもしれません。

もちろん、味の優劣がアフリカのコーヒーとアメリカのコーヒーの間にあるわけではありません。

どの地域のコーヒーも、それぞれに魅力があり、美味しいものです。

次回以降、国ごとのコーヒーの特徴を紹介していきたいと思います。



美味しいコーヒーの「品種」ってあるの?


美味しいコーヒーを作るには、

・素晴らしい品質の豆が生産される

・適切かつ注意深い品質管理の下、消費国に生豆が届けられる

・生豆のポテンシャルを引き出せる焙煎を行う

・適切な抽出を行う

以上の条件がそろう必要がありますが、
下の二つ、焙煎と抽出は、全体のウェイトのせいぜい2割程度の重要度かなと思っています(^^ゞ

まずは、品質の良いコーヒー豆があり、それが消費国に届けられる。
この生産とサプライチェーンが大事です。

品質の良いコーヒー豆とは何か?
度々このブログでも触れていますが、

・完熟して
・欠点の少ない
・かつ、産地の特徴をいかんなく持っている

そんなコーヒー豆です。
ではコーヒーの木の品種で、品質の良し悪しはあるのでしょうか?

実は品種はそんなに重要ではありません。

コーヒーの木は大きく分けて
・アラビカ種
・カネフォラ種
・リベリカ種

という種類に分類され、アラビカ種がもっとも風味が良いとされています。
レギュラーコーヒーのほとんどはアラビカ種です。

カネフォラ種は、風味がアラビカ種に劣りますが、病害虫に強く、どこでも育つので、各国で大量生産されています。
主に缶コーヒーや加工品用です。

リベリカ種は、リベリア原産と言われている品種ですが、生産量が少なく、風味もアラビカ種に劣るとされ、ほとんど流通していません。自分もリベリカ種は飲んだことがありません。

アラビカ種をさらに分類すると、品種が数多く存在しますが、
コーヒーは遺伝的に比較的不安定なようで、品種改良や突然変異などで、かなり頻繁に亜種が出現します。

品種改良も進んではいますが、
風味にフォーカスされた品種改良よりも、病害虫対策など生産性を重視した品種改良がメインです。
ですので、コーヒーに関しては、特別に美味しい品種と言うものはありません。

もちろん珍しい、希少価値のある品種はあります。
例えば、ゲイシャ種

これはパナマのエスメラルダ農園で、単一品種として生産されたものが品評会で賞を取って一躍有名になりました。
しかし、新しい品種でもなんでもありません。
コーヒーの原種に近く、病害虫に弱くて、今までは生産の主役になることが出来なかったのです。
世界各国の多くの農園で、混合栽培種の一種として植えられているとのことです。

そうそう、コーヒー農園では普通は複数の品種を栽培してブレンドしています。
単一品種だと、生産性に偏りが出るのと、万一病気が発生した時に簡単に全滅してしまうからです。

コーヒーの風味の違いは、品種によるものよりもむしろ、その土地の土壌や生産処理に依る部分が大きいです。
次回は、もう少し具体的に産地ごとの風味について考察してみたいと思います。