「 2016年11月 」一覧

コーヒー焙煎レシピの変遷


私のコーヒー焙煎レシピについて振り返ってみてみます。
大きく分けると以下の3パターンになります。

○サンプルロースター時代
○手網焙煎時代
○1ポンド焙煎機時代

ただ、焙煎機のレシピと手網焙煎のレシピは似通っている所が非常に多いと言えそうです。
なにせ手網焙煎のレシピを焙煎機にあてはめ、さらに手網にフィードバックしているのですから。

美味しいコーヒーの焙煎方法には、自分なりの原理原則がありまして、そこを外さなければ焙煎の道具はあまり関係ないだろうと考えています。

ただし、原理原則を維持できない焙煎方法ではダメですが。。。

こうして自分の過去を振り返ってみると、焙煎のやり方が大きく変化したというより、
・よくわかっておらずやみくもに焙煎していた時期
・焙煎方針が定まって、微調整を繰り返している時期

こんな感じになるかなと思います。

○サンプルロースター時代
自分が所有するサンプルロースターは、パンチ穴のないタイプで排気が全くダメでした。
とにかく蒸気や煙が籠ってしまうので、基本的にダブル焙煎でした。

※ダブル焙煎とは
焙煎初期に、生豆の色が褐色になり始めた段階で一度焙煎機から出して冷却し、再度焙煎機を温めて再投入する方法。
この方法は、品質の揃わない生豆を焙煎するときや、能力の低い焙煎機などで行われることが多く、焙煎の足並みをそろえる方法として、(意外と)有効です。

サンプルロースターでは、水蒸気が籠ってしまうので、豆を出すとともに、籠った水蒸気を外に出す目的で行っていました。

ただし、この方法の決定的な問題点は、コーヒーの風味がとても弱くなってしまうことです。
品質の低い豆なら、エグ味を抑える方法として有効かもしれませんが、スペシャルティーコーヒーでやってしまうと、平べったい風味の凡庸なコーヒーになってしまうこと請け合いです汗。

焙煎レシピは。。。
1.焙煎機を空の状態で温める
2.温度計を突っ込んで、内部が200℃(そもそもどこを測っていたのか今となっては謎ですが)になったら豆を投入。
3.弱火にして焙煎機を回し、豆が褐色になる段階でいったん豆をザルにあける
4.豆は冷却、同時に焙煎機は温めて中の水蒸気を飛ばす
5.再び200℃くらいで豆を再投入、火力は中火
6.1ハゼが始まったら弱火にする
7.2ハゼが始まったと思ったら豆をザルにあけて冷却

全行程で約30分ほどです。
時間はちゃんと計っていません。最初は計っていたのですが、何しろ毎回時間が変わってしまうので、途中であきらめて、豆の色とハゼの音で判断していました。

今振り返ると、全然ダメなレシピです(^_^;)
 
 
○手網焙煎時代
手網焙煎は難しいなんて言う方がプロの焙煎士にもいらっしゃいますが、そんなことはありません。
確かに業務用焙煎機に比べれば安定性に欠けますが、それでも下手なお店のコーヒーよりはるかに美味しいコーヒーを焙煎することができます。
手網の焙煎方法の基礎は、ワイルドコーヒーの手網焙煎講座で習いました。
押さえるべきポイントは、

・時間をきっちりと計ること
・手網を熱の通り道(熱のカーテンと表現していました)から外さないこと

つまり、ガスコンロの炎以外の冷たい空気のエリアにコーヒー豆が行ってしまうと、良くない風味の原因になるということなんだそうで。
あと、冷たい空気で豆が冷却されてしまうと、焙煎時間のコントロールもできなくなってしまいます。

では焙煎レシピ(生豆は125g、仕上がり約100gです)
1.生豆を水で洗い、チャフを取り除く(洗い方は省略(^_^;) 知りたい方は私まで問い合わせてください)
2.タオルでよく吹いて水分を切った生豆を手網に入れる
3.ガスコンロは強火(最強)で、手網を振る高さは常に一定にする(目標物を決めて振るとよい)
4.焙煎速度の調整は、焙煎を強めたいときは振る高さを下げ(炎に近づける)、弱めたいときは振る高さを上げる(炎から遠ざける)
5.(内緒の技)
6.高さは炎から20センチくらい(※コンロによっても変わります)で小刻みに力強く振る
7.豆の色が褐色になります(ここまでが6分30秒になるよう目指す)
8.少し炎に近づけて振る。パチパチと音がし始める(1ハゼ:ここまで9分)
9.炎から少し離して振る。今度はピチピチと甲高い音がし始める(2ハゼ:ここまで11分)
10.ザルにあけて扇風機(ドライヤーなど)で風を当てながら急冷させる

注:5.の所は我々が劇的にコーヒーを美味しくするための策を行うのですが、公開するか悩みましたが、やっぱり非公開にします。ワークショップなどのイベントでしたら公開してもよいのですけれどね(^_^;)

自分はめっきり1ポンド焙煎機に移行してしまいましたが、手網焙煎は今もなお有効な手法です。
 
 
○1ポンド焙煎機時代
このブログを書き始めてからは、コーヒーの焙煎は1ポンド焙煎機がメインですので、焙煎レシピはブログに繰り返し記しています。
ということでその集大成がこちら。

☆直火式、半熱風しき等の焙煎方式について
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(1)

☆自分の焙煎の考え方、焙煎の概要(ここはぜひ目を通してほしい)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(2)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明1(0.準備~2.初期加熱)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(3)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明2(3.第一反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(4)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明3(4.第二反応帯)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(5)

☆(2)で示した全体の流れを各項目ごとに詳細説明4(5.発展領域)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(6)

改めて読み返してみましたが、よくもまあこんなにバラしてしまったものです(^_^;)
これ有料コンテンツでも良かったのではなかろうか?
そのうちに小冊子にしたら、誰か買ってくれるだろうか?
 
細かいところは、微妙に考え方が新しくなっている部分はありますが、基本的な概念は上にまとめた感じで今も変わっていません。
 
これが他の焙煎機でも通用するのか?というのが次なる課題ですが・・・
たぶん通用します。

10kg焙煎機までなら自分は使用経験があるのですが、少なくともそこまでは同じ考え方、レシピで通用するはず。

30kg釜以上の大型機になると、ちょっとわかりませんが・・・
 
正直、1ポンド焙煎機では全然注文に追い付けていないので、本格的な焙煎機欲しいのですが、、、
諸事情により(ていうか¥¥¥な事情で(^_^;)当分は現状維持な感じです。



コーヒー焙煎の履歴


私自身のコーヒー焙煎歴は、2010年に初めて手回しのサンプルロースターを購入したことに端を発します。
それまで単なるコーヒー消費者だった自分が、なぜ焙煎を始め、そして豆を販売するに至ったのかを振り返ってみたいと思います。

○コーヒー焙煎以前
普通にコーヒーを楽しむ愛好家でした。ただ、なんでもよいというわけではなく、やはりおいしいコーヒーを探し求めていたように思います。
しかし、十分な知識があったわけでもなく、知識をつけようと思ったこともなく、普通にスーパーのシングルオリジンのコーヒーを飲んでみたり、たまに自家焙煎店に行ってコーヒーを購入したりしていました。

タンザニアのコーヒーが好きでした。どこの自家焙煎店でもタンザニアコーヒーは酸味を残すように仕上げていてそれが美味しかった記憶がずっと残っています。
ブルーマウンテンも時々購入していました。購入していた自家焙煎店のブルーマウンテンも、酸味を残した風味でしたが、こちらはタンザニアコーヒーほどの感動は無く、ブルーマウンテンは高価=ブランド品を飲むステータスにあこがれていたのかもしれません。

当時、コーヒーのオークションなどまだ知られておらず(コピ・ルアックはレアすぎて入手できませんでしたし)、ブルーマウンテンが最も高価なコーヒーの代表として不動の地位を築いていたように思います。

○2010年前後 手回し焙煎機購入
ユニオンのサンプルロースターと呼ばれるもので、ガスコンロの上に載せてハンドルを回しながらコーヒーを焙煎するものです。

なんで突然コーヒーの焙煎を始めたかというと、この前後にとある方から「コーヒーの輸入をしてみないか?」のようなビジネスの話が舞い込んできたせいでした。

話を聞いてみると、どうやら現地で焙煎したコーヒー豆を輸出したいとのことでしたが、サンプルのコーヒーを色々な人に試飲してもらったものの、ことごとく不評。たまたま見本でもらった生豆があったので、これを焙煎したらどうなのか? ということで、サンプルロースターを購入して、手探り状態で焙煎してみました。

これが思ったより美味しい。
この時に、コーヒー豆は消費地で焙煎して、即座に販売する方が美味しい(鮮度も保てる)こと、日本人には日本人の好みの味があることを初めて認識しました。

結果的に、このコーヒーを輸入する話は流れてしまったのですが、この体験をきっかけに私自身はすっかりコーヒーにのめりこんでいくのでした。

○2012年 手網焙煎に変更

最初のオリジナル焙煎コーヒーが意外に美味しかったのに味を占めて、自分で生豆を探して焙煎を始めました。
しかし、どうやっても何度繰り返しても美味しくない。

最初のコーヒーは美味しかったのに・・・
今思えば美味しくない要因はいくつも思い当たるのですが、そもそも手回しサンプルロースターは、焙煎条件を一定にするのが極めて難しいのです。

一番の問題は、煎り止めのタイミングで即座に焙煎を止めることができないこと。
重さもそれなりに合って、炎であぶられて熱々のサンプルロースターをひっくり返して豆を取り出さなければならないのですが、ひっくり返している間にも焙煎は進行してしまう。しかもその作業はやけどの危険を伴うので、手早くなんてできない。

何とかならないものか、そう悩んでいた時に巡り合ったのが、手網焙煎でした。
東京、浅草橋にある「ワイルドコーヒー」という自家焙煎店で、手網焙煎の講座をやっていたのでさっそく受講。
この時に頂いたコーヒーが何とも言えず美味しく、これなら焙煎もうまくいく!とさっそく自分でも取り組んでみたのです。

量は1回に100g程度でしたが、コツさえつかめば手網焙煎は非常にお手軽で、美味しいコーヒーを作ることのできる方法でした。手網焙煎のおかげで、自分の創るコーヒーに自信が持てるようになったのです。

○2012年秋 「東京タウンコーヒー研究所」発足
手網焙煎を初めてしばらく経った時、知り合いから「コーヒーを焙煎するマニアがいる」と紹介された人物がいました。この人物と意気投合し、「コーヒーを淹れて楽しむイベントをやろう!」と始めたのが、「東京タウンコーヒー研究所」の「コーヒーを楽しむ会」でした。

イベントで使うコーヒーはすべて自分たちが手網で焙煎。
美味しく淹れる方法も、すべて手探り状態でしたが、イベントはまあまあ好評でした。
最大の悩みは、イベント会場の手配。
収益を考えると大人数の方が良いのですが、講師2人ではどう頑張っても生徒20人くらいの対応が限度で、その程度の会場を都心で確保するとなると、採算が取れない。
また、会場を確保しても人が集まらなくて・・・などとなかなか大変でした。

とはいっても、コーヒーのイベント自体を開催する事が楽しく、主催側はほぼ毎回採算度外視で行っていました。

○2014年 小型焙煎機を導入
イベントで使うコーヒーの量も増え、手網焙煎ではキツイ量になってきました。
その時に見つけたのが、ワイルドコーヒーが販売を開始した
「1ポンド焙煎機」

この焙煎機以前にも、「ナナハン」と呼ばれる1kgの焙煎ができる小型焙煎機がリリースされていましたが、価格が100万円近くでちょっと手を出しかねていました。

しかし、いい加減焙煎機が欲しい。

そう思いつめていた時に、1ポンド焙煎機が登場したのです。
お値段は40万円くらいと決して安くはありませんが、手の出せる価格。
これは買うしかない! そう決心して購入を決めました。

そして忘れもしない2013年のクリスマスの日。

ついに焙煎機が届いたのでした。

この翌年からの記録が、このブログには記してあります。

☆始めは台所の片隅に置いて、使うときに引っ張り出していました
コーヒー焙煎機

☆何を悩んでいたのか、今となっては謎です汗
ていうか、まだ焙煎条件が安定していなくて、試行錯誤しては失敗していたんです。
コーヒーの焙煎、苦労が絶えません^^

☆焙煎機の使い勝手については、気になったら即座に改造を加えていきました
焙煎機 ちょっとずつ改造

☆今振り返ると焙煎技術もまだまだでしたね。
この時の味のばらつきは、豆の品質よりも焙煎条件の不安定さの方が大きかったと、今は考えています。
本日の焙煎

☆購入した「1ポンド焙煎機」にはサイクロンも豆の冷却器も、ついていませんでした(現在販売されている後継機にはついています)
そこでサイクロンは自作。
豆の冷却器も自作。
焙煎機 ちょっとずつ改造2

☆最終的には、自宅の裏庭に焙煎用の小屋を建てて、焙煎機を引っ越し
コーヒー焙煎機を引っ越し

☆焙煎条件に気圧が影響するのでは?と疑問を持ち、気圧計を購入
(現時点では気圧はあまり関係ないと考えています(笑))
焙煎条件を再確認

・・・

こんな感じで、焙煎機も焙煎環境も進化してきました。
う~ん、我ながらよくやってる?

ハードの部分についてはこんな感じです。
次回はソフトの部分「焙煎レシピの変遷」を振り返ってみようと思います。