コーヒーの焙煎 味作りのポイント(6)


年末に入り、忙しい日々が続いていますね。
ブログの更新もやや滞り気味ですが、頑張ってこのシリーズも完結させないといけませんね。

前回までの流れをおさらいしましょう。

0.準備
1.投入
2.初期加熱(~130℃)
3.第一反応帯(~170℃)
4.第二反応帯(170℃~200℃)

ここまで10分前後です。焙煎の深さによって、4.第二反応帯、のアプローチが異なることは、前回解説した通りです。今回はその続きのお話をしたいと思います。

5.発展領域(200℃~240℃)

ここでは、焙煎度の深さと風味をどうつけたいかによって、若干火力が異なりますが、基本は弱火で排気量を強くする、方針で焙煎しています。

A.B.浅煎り~中深煎りまでのコーヒーの場合
火力を落とし、排気もやや落とします。焙煎時間は1ハゼ後1分~2分程度で煎り止めします。
温度徐々に上げつつ、香りの成分を発展させるのが目的です。
この領域の時間のとり方で、キャラメルのようなフレーバーが乗ります。
火力をきっちりと落とさないと、ザラザラした苦味が乗って飲み心地が悪くなります。

温度上昇とともに酸味が失われていきますので、酸味を強くしたい場合は温度を上げないようにします。ただし、短時間で切り上げてしまうと風味が弱くなるので、極力温度上昇を抑えつつも時間はきちんとかけるようにします。

多くの焙煎士は後半は排気を落とさないと思いますが、私の焙煎機は熱容量が小さくて火力を落とすとすぐに焙煎の進行が止まってしまいます。そのために、排気を落として焙煎機が冷えすぎないように気を遣っています。あと、排気を落とすことで苦みの発展を抑える意図があります。

この領域では煙とチャフ(コーヒー豆についている薄皮)がたくさん出ますので、排気を落とさなくてよいなら落とさない方が良いとは思います。ただ、自分の見解として、ニュートラルポジション以上に排気をしているならば、豆に煙の戻り香はつくことは無いんじゃないか?と考えています。

排気を維持する目的は、どちらかというとチャフを飛ばすことがメインと考えています。自分の焙煎機はチャフを飛ばしきるパワーが無い(^^;)ので、そこを諦めて風味コントロールの意味で排気量をいじることの方が多いです。

C.中深煎りよりも深い焙煎の場合
フレーバーの発展はもちろんですが、同時に苦味を調整します。
ここでの火力調整で苦味を乗せるか、乗せないか決めます。

・苦いコーヒーにしたい場合は、ある程度の火力を維持します。
・苦くないコーヒーにしたい場合は、焙煎が進むぎりぎりの状態まで火力を落とします。

目安として、1ハゼ後から2ハゼまでの間隔が3分を切らない程度の火力であれば、苦味が乗らないコーヒーになるようです。

グッとくる苦味を乗せたい場合は、火力をあまり落とさずに。
軽い苦味にしたい場合は、苦くない場合よりやや火力を上げ気味に。

ここでの微妙な火力調整で、苦味をコントロールします。

苦味の乗りやすさはコーヒー豆の産地によっても異なるので、豆ごとに火力は異なります。

自分の経験では、
・タンザニアの豆は、良い苦味が乗せやすいです。
・スマトラの豆は、苦味が乗りにくいので、苦くしたい場合はかなり火力を上げます。
・ジャワの豆(アラビカ)は、簡単に苦味が乗ります(アイスコーヒーの苦味用に使ってます)。

排気については、チャフが飛ぶのに十分な排気ができていれば問題ない、と考えています。

2ハゼについて

コーヒーは「ハゼ」と呼ばれる現象が2回あります。
最初は「1ハゼ」と呼ばれ、豆の内圧が高まって蒸気が細胞壁を破って起こる現象です。
次が「2ハゼ」と呼ばれ、組織が硬化して、発熱とともに崩壊して起こる現象です。

1ハゼが「ポンッ、ポンッ」と比較的勢いのある音なのに対して、2ハゼは「ピチッ、ピチッ」と甲高い音がします。

2ハゼを過ぎると、豆は自発的に発熱して焙煎は一気に進みます。2ハゼが終わると、豆はそのまま炭化へと向かいますので、炭になってしまわないうちに窯から豆を出さないといけません。この辺になると、豆に引火して燃えてしまう危険も出てくるので、極深煎りにする場合は余計に気を遣います。

ちなみに私はフレンチローストまでで焙煎を終えます。イタリアンローストは苦味しか感じなくて、自分が好きじゃないのと、そもそも需要がないのが理由ですね。
苦いコーヒーはフレンチロースト手前でも十分に苦いので、極端な深煎りにする理由がありません。

以上で、私の焙煎方法を一通り解説しました。
焙煎を1つのパターンで行う事は不可能で、食材に合わせて調理方法が異なるように、豆に合わせて焙煎方法も変えていかなければなりません。
また、同じ豆でも焙煎方法を変えれば異なった味にすることが出来ます。

そういった意味で焙煎方法に絶対はないので、焙煎する人の意図通りの味になったのかどうか、それを飲む人が美味しいと思えるのかどうかが大事だと考えています。

何がともあれ、焙煎を議論する大前提として品質の良い生豆がある、このことが一番大事です。
良い生産者が良い豆を作り、その品質を維持しながら輸送する技術がある。焙煎もまた、良いコーヒーをお客様にお届けする過程の一つでしかありません。

そのことは常々肝に銘じて、これからも精進していきたいと思っております。


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