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前回の記事:
☆直火式、半熱風式等の焙煎方式について
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(1)
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焙煎を理解するのに、私が大事だと思っていること、それは「焙煎は化学変化である」ということを念頭に置くことかなと思っています。
その上で、料理としてコーヒーの味を作ることを考えると、割と思い通りに焙煎ができるようになると思います。
「焙煎は化学変化である」を意識する意味について、少し説明します。コーヒー生豆には数百種類の成分が確認されており、熱を加えることによってそれらが複雑に反応していきます。それらの化学成分が分解したり再結合したりするためには、物質ごと固有の反応温度、反応時間が決まっています。(ここにコーヒー豆を構成する繊維質の状態変化も影響してきますので、かなり複雑な反応が起こっていると考えられます。)
もちろん数百種類もの成分が反応するので、各成分ごとに反応温度は違っていますが、大きく見れば3つ(投入工程を含めれば4つ)の温度帯域にまとめられるように思います。それを踏まえた上で焙煎に必要なことは、
・ある温度帯に速やかに入れるための、迅速な昇温
・その温度帯を維持するための、火力コントロール
・(自分で想定した)規定時間を過ぎたら、速やかに次の温度帯に移行、もしくは焙煎を止める
あくまでの私の焙煎の場合ですが、焙煎の温度上昇を一定にするという考えは持っておりません。
したがって「1分間に○○℃昇温させる」という概念では、私は焙煎を議論できないのです。
冒頭から難しくなりました・・・
理屈はさておき、具体的なコーヒー焙煎手順から説明して行きたいと思います。
と言ってもいきなり焙煎の詳細を書いても訳判らないとおもいますので、まずはざっくりとした流れ、火加減などを書いてみたいと思います。
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0.準備
生豆の選別を行い、欠点豆を取り除く。焙煎する分を計量して小分けし、保温庫に入れて30℃で1時間以上温めておく。
1.投入
焙煎機に火を入れて、空の状態で規定の温度まで温めておく。既定の温度になったらタイミングを見計らって生豆を焙煎機に投入する。
2.初期加熱
豆を投入したらすぐに火力を上げる。130℃までは短時間で一気に昇温することを心がける。
この工程の途中で焙煎機の温度は大きく下がり、(中点で)折り返して上昇に転じる。
3.第一反応帯(130~170℃)
火力を変化させ(落とす場合も上げる場合もある)、適正時間で反応が進行する様に火力を調整する。豆の色は緑→黄緑、又は白に変色。
適正時間は2分30秒が目安で、豆ごと、味ごとで長くしたり短くしたり調整する。
この温度帯の後半170℃付近で、豆の色は茶色くなってくる。
※この領域の火力調整で酸味の強さと質をコントロールする。
4.第二反応帯(170~202℃)
火力、排気の風量を適正値に合わせる(通常は火力、排気量ともに上げる)。強すぎても、弱すぎても理想の味からずれてしまう。
キャラメル化を促進させ、コーヒーらしい味わいが出てくるようにする。
適正時間2分30秒~3分
豆の色は全体的に茶褐色で、この工程の終盤に豆がハゼる。
5・発展領域(202℃~)
火力を落とし、香りと風味の発展を促す
中煎りの酸味を強調させたいコーヒーでは、焙煎が止まらないぎりぎりまで火力を落とす。
深煎りのコーヒーでは火力はやや落とす程度で、焙煎を速やかに進行させる。
※この領域の火力調整で、苦味をコントロールする。
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おおざっぱに書くとこんな感じですが、コーヒーの焙煎で一般に言われている「水分抜き」については触れていません。一般に言われている水分抜き領域は第一反応帯に相当しますが、自分はここでの工程を水分抜きと捉えていないのです。水分が抜けるかどうかは重要ではなく、この領域はあくまでもコーヒーの風味を形成させる成分の下地作りという位置づけです。
また、コーヒーは一定時間焙煎が進行するとパチパチとハゼます。多くの焙煎士はハゼのタイミングを火力調整のタイミングにしていますが、私はハゼを焙煎進行具合を見る目安としてのみ確認しています。ハゼようがハゼまいが、規定の時間内に規定の温度になっていなければ火力は変えません。
ちょっとわかりにくいかもしれません。
自分の焙煎では、酸味のコーヒーと、深煎りのコーヒーでは焙煎工程が大きく違うので、一つにまとめるとどうしても抽象的になってしまいますね(^_^;)
最低限、焙煎中の第一反応帯、発展領域で酸味や苦味を調整しているということをご理解いただければ、今後私が書く文章が理解しやすくなるかもしれません。
次回以降は、各焙煎工程を一つずつ取り上げて、じっくりと(マニアックに笑)語っていきたいと思います。
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続き:
☆ 全体の流れを各項目ごとに詳細説明1(0.準備~2.初期加熱)
・コーヒーの焙煎 味づくりのポイント(3)
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